フィンランド
フィンランドがNATOに加盟申請することを決めた。フィンランドは僕にとってはちょっとした思い出がある。ちょうど20年前の2002年、サッカーのW杯が日韓共催で開かれた年、仕事で何度かこの国に行った。早春のラップランドでサウナに入りスキーもした。夏のヘルシンキでバルト海クルーズもした。ヘルシンキの北緯は60度。夏は本当に白夜になる。深夜も夕暮れのようにほのかに明るい。逆に冬は昼間が少ししかない。氷河が削り取ったまっ平らな大地。数百ロ先の灯台が見えるとフィンランド人の友人は言っていた。ロシアとの因縁の悲惨な歴史は不覚にもそのときあまり細かに聞いていない。が、ロシアとつながる鉄路は、そのままロシアから来れないようにゲージのサイズを違えているという話はいまも印象に残っている。きのうテレビでは地下シェルターがよく整備されていて多くの国民がここで難を逃れることができると言っていた。人口でいえばわずか550万人の小国だ。神奈川県の人口より少ない。でもこの小国が、iPhone出現前は携帯の絶対王者だった「ノキア」を輩出した。夏のヘルシンキの穏やかさ、平和さ、快適さはいまでも鮮明に記憶に残っている。20年前の当時、日本もフィンランドも困った国ロシアの隣人という共通項があるから友だちだねというたわいもない話をしたが、20年後のこんにちでは全然笑えない話になってしまった。あんな穏やかで美しい街が、国が、ロシアに侵略される可能性なんて考えたくもないが、今度のことで現実的な危機としてフィンランドの国民は認識したしNATO加盟は「生き残り」のための不可欠な選択なのだろう。いいことだ。本当に日本も他人事ではない。