当事者意識を欠いた社会

また良書に出会った。「考える。動く。自由になる。」工藤勇一さんという横浜創英中学・高等学校の校長先生が著した、若い15歳くらいから上の子たちに向けた「哲学」の本、とされている。たまたま書評で見かけたのですぐにアマゾンでポチって取り寄せた。そうだ、そうだ、と思いながら読み進めた。共感するところがたくさんあった。中でも日本の社会に関する記述はまさに我が意を得たり。いまの日本は「ものごとを人のせいにする」社会に堕してしまったと。その原因は、あまりにみんながサービスを受けることに慣れ過ぎてしまい、自分勝手に理想をつくり、その理想を現実と比べて不満を募らせるという悪循環をつくっているからだと。そこに欠けているのは「自律」と「当事者意識」。問題やテーマに関して自分が解決する、自分が行動するという自分ごとの意識が当事者意識。工藤先生は学校現場で、この当事者意識を呼び覚ますというか自覚させる「魔法の問いかけ」として、①どうしたの? ②これからどうしたいの? ③何か手伝えることはある? の3つを聞くのだそうだ。子どもたちを怒るのではなく、小さくても自分で考え自己決定を促す質問を投げかけるのだそうだ。これは単純だが深い。そして、まさに、いま中小企業支援で流行語というかバズっている「伴走支援」にも全く共通する考えだと思う。コンサルがズカズカ乗り込んで、分析して診断して、はい、答えはこれでござい、とやっていると、肝心の支援される側の事業者さんの当事者意識は呼び覚まされないし育たない。補助金という「解」は乱発されるが、まさに「これからどうしたいの」の問いを極めないと、何をやっても身にならない。

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