辛い制作現場

昨日放送されたNHKの「ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~」はとても面白かった。よくここまで舞台裏を撮らせたなーと思うくらいの内容だった。庵野秀明の実写版映画は確かに面白い。2016年の「シン・ゴジラ」が映像として衝撃的であり斬新だった。東京がゴジラに破壊しつくされ「弊社も御社も木っ端みじんになりましたなー」が社外の人との会話になったくらいだった。リアリティという点でそれまでの特撮映画とは一線を画してひとつもふたつも上にいく内容だった。去年公開の「シン・ウルトラマン」も、リアルタイムで観てた僕ら世代にも十分唸る内容でよかった。体脂肪率ゼロ%ではないかと思われる痩身の筋肉質のウルトラマンは美しく強かった。そういう庵野監督の「シン・仮面ライダー」の制作現場。番組を観ていて本当にヒリヒリするほど辛そうな現場だった。一番トップの庵野氏が細部にものすごくこだわり、現場でどんどん考えを変え、スタッフが入念に準備・用意したものを次々ちゃぶ台返しをする... いるよ、いる、こういう人。どういう名前のハラスメントか知らないが、これは立派な、高レベルのハラスメント。でも日本のコンテンツの制作現場で多かれ少なかれこういう文化だったんでしょう。なんとなくわかる。殺陣担当の監督、よく最後までブチ切れず辞めなかったなーと感心を通り越してみてた。自分の考えを最初からちゃんと言語化せず、出す指示もあいまい、自由にやってくださいとか言いながら次々想定外の判断をして現場を混乱させる。よく言えば走りながら現場で創造性を発揮するということかもしれないが、ついていく現場は大変だ。昨日の番組でもそうだったが「この監督を考えを理解し実現できない俺たちがまだ未熟なんだ」と、監督ではなく自分たちを責めるという倒錯した形にどんどんなってしまう。興行実績を出している庵野氏だから現場の誰も何もいえないんだろうが、なんか観ていてとても肯定的な気持ちにはなれなかった。創造性、クリエイティビティを旨とする制作現場が無理筋の連続であることは理解するにしても、現場はもっと楽しくあるべきだ。昨年の大河ドラマ「鎌倉殿13人」の制作は脚本がよかったのはもちろんだが、それ以上に吉田さんというプロデューサーを核としてキャストと制作現場に一体感があり楽しそうに仕事をしていたように見えた。楽しさが活力を生み新たな創造を生む好事例だった。しかるに昨日の現場はそれとは真逆。辛く重たい現場に見えた。それじゃダメよね。そんなダメな現場発の「シン・仮面ライダー」。どんなものか逆に観てみたくなった。

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