もったいない

きのう「海の日」の日経1面は「60代社員 現役並み処遇」の記事。最近とみに人手不足が顕在化してきて、加えて岸田政権がこれから「雇用の流動化」を本気で政策的に推進する方向なので、企業はそれを見据えてこれまで「お払い箱」扱いだった60代社員を「戦力」としてて捉えなおそうという動きなのかもしれない。思いかえせば日本で役職定年制が導入され始めたのは約10年前だった。僕がソニーを辞めようかと思ったきっかけも役職定年制だった。統括部長職は55歳でその職を下りないといけないという制度だった。60歳の定年を超えての再雇用の制度も当時あったが、月給20万円の年収240万円で、いたけりゃいさせてやる的な制度だった。せっかく(苦しくも)楽しく統括部長の仕事をしていたのに、なんだよあと数年でこの仕事を譲んなきゃいけないのかよ、60歳超えたらそういう処遇かよ、と正直思った。当時のソニーはいろんな意味で一番苦しい時期で会社全体もがいていた。そんな中での役職定年制の導入。しかし(いまは会長になった)当時副社長でCFOだった吉田さんのメッセージはよかった。「よりよいソニーを後進に残そう」- シニア層に真正面から世代交代を促すメッセージだったし、それは僕らも真正面から受け取った。そうだよな。ロートルがポジションを塞ぐんじゃなくて、若い優秀なヤツらにそのポジションを譲って彼らがもっともっと活躍すべきだよな。すとんと腹に落ちて、そこから真剣に自身のセカンドキャリアを考えるようになった。会社の活躍の場をもっと若い人たちに開放する。その考え方は少子高齢化がもっと進んだ今はもっと当てはまるはずだが、そう考えると、昨日の日経の1面の記事には違和感がある。ツイッターには「どうせ高齢化した役員/幹部のお手盛りの動きでしょ」と揶揄されていた。そう思われても仕方がない。会社の人的資源を60代により手厚い形で配分するというのはなんか時代に逆行している。それなら若い人たちの給料あげてやれよ。なによりも、60代過ぎた人たちをまだ会社に囲うのかよ、もったいない、と思う。大企業のサラリーマンというのは、日本においてはある種の「身分」的なところもあるから、本人は1日でも長くやりたいのは分からないでもないが、他にもいろいろ生き方や機会があるのに、60代こそそれにチャレンジできるのに、ああ、もったいないなぁと心から思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です