明るくない超未来
面白い本に出合った。「人類と気候の10万年史」(中川毅著)。新書なのですぐ読めるが、内容が面白く読みだしたらあっという間に読み切った。福井県三方五湖の「水月湖」には「年縞」と呼ばれる何十mもの堆積層があって、それを掘削して切り出して完全な形で研究室に持ち帰ることで、なんと15万年もの時間が1年ごとに正確に解析できるようになったのだと。それ自体が驚きだが、驚きはその解析の中身。簡単にいえば、地球の公転軌道は2万年のサイクルで円と楕円の間を行ったり来たりしてそのことが氷期と暖期を繰り返す。氷期は1万年ちょっと前に終わり、そこから人間は世界中に住処を広げ農耕を始めたのだと。氷期はいまの気候に比べるととんでもなく寒くまた年による寒暖差が、とても激しい環境激変期だったそうだ。それが氷期が終わったこの1万年は気候的にはかつてない安定期らしい。本来であれば徐々に氷期に向かうはずが、5千年前に始まった農耕によるメタンガスが地球を暖め氷期の到来を送らせている可能性があるらしい。工業化したこの150年で地球が温暖化したという通説というかパラダイムが根底から覆る。何よりもこの人類の繁栄と栄華は、地球史的にはほんの一瞬の気候の均衡状態の中で起きた「場面」でしかないということを十分に思い知らされる。いつのことだか知らないが必ずまた氷期が訪れ、そのときは恐竜が絶滅したように、100億人もの人間の生存は望めない。そんな絶望の啓示を最新鋭のAIがしてくれるのだとしたら、とても喜劇だ。