新入社員時代の思い出
38年前の1984年、僕はマツダに入社した。会社名が「マツダ株式会社」になったのはその年の5月で、入社時は「東洋工業株式会社」だ。懐かしい。新入社員は事務系は確か50名、技術系が300人弱という規模だった。事務系はその年は暮れの12月まで「新入社員教育」の連続だった。教育訓練センターでの約2ヶ月の座学。チョーつまらなかった。6月からは販売会社でセールス研修。僕は「大阪マツダ」という販売会社の大阪・生野区の店舗に配属になった。販売担当エリアを指定されて、その区画を鞄一杯にカタログと名刺を持って一軒一軒訪問する。一日60軒回ってこいというノルマだった。訪問結果は毎日チーフに報告する。ウソはバレる。季節は夏。大阪の夏は当時から地獄。アスファルトの上にずっといると灼熱地獄だった。当然喫茶店に逃避する。高校野球を観る。そんな毎日だった。お家をこっちから訪問してクルマなんて売れるはずもないので、よく心折れなかったなぁといまにして思う。最初の成約1台目は自宅を工場にして旋盤を細々やっているおっちゃんだった。僕と同い年の息子さんが社会人になったというので僕のことをかわいそうに思って買ってくれたのだ。売ったのはファミリアバン、118万円、全額キャッシュだった。札束数える手が震えた。結局その年なんだかんだで十数台売れたのだが、僕の人生の中でもいまだに超異質な職業経験だったので38年経ってもいまだに強烈な思い出だ。そこから何か特別な知識や専門性が得られたわけでは全然ないが、モノを売るということの喜びと辛さのようなものは嫌というほど身体で覚えたような気がする。バーチャルなんていう世界はなく全てがリアルだった時代の話。