赤字ローカル線
ローカル鉄道の赤字路線の存廃問題で国交省の有識者会議はきのう1キロメートルあたりの1日の平均利用者が平時に1000人を下回る路線について、国と自治体、事業者が協議する仕組みを設けるという方向を打ち出した。JR九州の管内で2020年度にその基準を下回ったのは、2路線2区間。まずひとつめは豊肥線の宮地─豊後竹田で2020年度実績は実に109人/日km。1000人に遠く及ばない。次いで三角線の宇土─三角の775人。コロナ前は1000人を上回っていたらしい。あと、水害で運休中の肥薩線も該当する。これらの区間は今後廃止→バスに転換という方向に事実上弾みがつくと思う。熊本地震で長く運休になっていた肥後大津─宮地は国費を投入して2年前に復活して、観光列車「ななつ星」も走る観光路線ということで維持する意味は一定程度あると思うが、地域の足としては本当に使いづらい。まず本数がない。ご近所の豊肥線宮地駅の肥後大津行きは午前中6本(うち特急1本)、午後0時~18時で7本(うち特急2本)、18時以降はわずか4本。だいたい1時間に1本の感覚。50キロ離れた熊本駅までは各停に乗ると下手すると2時間かかる。それで運賃は片道1130円。これでは利用しろというほうが無理だ。クルマのほうが圧倒的に便利。しかし、クルマが生活に絶対不可欠な田舎でも、例えば、財布を落とす、免許証をなくす、免停や免取になってクルマが使えなくなるというリスクは常にある。公共交通機関というバックアップがないと生活できない。もっとよく考えると、今後高齢者が増え、免許返納が増えてくると、公共交通機関がない地域では暮らせないという話だ。田舎は若くないと住めないのかという笑えないジョークがアタマに浮かぶ。鉄道ノスタルジーでこの赤字ローカル線存廃問題を眺めると誤る。どうやったら安価で便利な公共交通の仕組みを田舎で持続させられるのかということが本質で、バスやBRTがその解ならむしろどんどん進めてほしい。バスすら走れない地域は本当に消滅するしかないのではないかという気がする。