小規模事業者支援の歴史③
(きのうからの続き)「持続」を基本哲学に据えた小規模事業者支援だったからこそ、未曾有のコロナ禍で、雇用調整助成金や事業者に直接現金を配るという事業復活支援金などがなぜああして迅速に出動されたのかが、いまにしてよくわかる。この支援金に関しては詐欺事件が頻発して社会問題にもなったが、総じて多くの小規模零細事業者はこうした政策のおかげで現実に助かった。「基本法」という政策のバックボーンとなる考えがいかに大事なものかがよくわかる。安倍政権のひとつのレガシーだ。他方でこれらが国の基本哲学であるなら、そうした支援が「生きたカネ」になるように、支援する側、される側の底上げというかレベルアップは大事な問題だ。近時、補助金バブルと言われ、補助金メニューが数多く打ち出され、その都度、事業者は膨大な申請書類を埋めねばならない。そこには、いわゆる経営のセオリーというのか、自社の強み、弱み、外部環境の変化の認識、戦略、勝ち筋、数値計画等々、事業者単独ではなかなか書ききれないお題が並んでいて、故に現在診断士諸氏が大量動員されている。餅は餅屋にとばかり最近ではどんどん代筆稼業が盛んな模様。よくいえば事業者の想いを汲んで適切に表現するともいえるが、悪くいえば「ドーピング」かもしれない。いろんな事業者さんがいるので十把一絡げにはいえないが、総じて、やはり事業者さん側の底上げは避けて通れない課題に思う。「数字のことはわからん」と言い切る事業者さんは実に多い。しかしエネルギーも現材料も最低賃金も全てが上がりまくる、この、平時では全くない時代に、数字がわからん、では経営はできない。この小規模事業者支援を持続的な経済政策として位置付けるのなら、クルマの運転には免許証がいるように、やはり事業者側にも最低限のセオリー、フレームワーク、見識を求めていくというのが、今後のありようではないかと思うのである。