恩人
高名な経営学者である大阪大学教授の延岡健太郎さんが昨日拙宅を訪問してくださった。以下、延岡さん、と親しみを込めて呼ばせていただくが、わざわざこんな田舎にまで足を運んでうちまで来てくださったのは本当にありがたい。延岡さんとのご縁はちょうど34年になる。マツダの留学制度でMITに留学、1988年の6月に卒業され、マツダに復職された。年が明けて89年の2月(だったと思うが)、マツダ本社の講堂でご自身の留学体験を話される機会があり僕も参加した。もうかなり昔なのでお話の中身をよく覚えていないが、当時、留学制度の存在も仕組みもよく知らなかった僕は、身近なところにそういう経験の機会が現にそういう経験をした人が眼前にいることに身震いを覚えた。まだメールもない時代。面識皆無の延岡さんを職場まで直撃したのだと思う。ほどなく会社の近くの駅前の居酒屋で延岡さんといっしょに食事をさせてもらった。そこから僕は俄然留学熱に染まった。延岡さんはそれから数ヶ月してマツダを退職、PhDをとるためまたMITに戻っていった。僕はその後、回りの応援と自分の努力もあってノースウェスタン大学に合格、2年間、シカゴ北部のエバンストンに暮らし勉強した。卒業を目前に控えた1992年5月にボストンに住む延岡さんを訪ね再会した。94年に帰朝され神戸大学に教職を得た延岡さんは著作が賞を得るなどあれよあれよという間に非常に高名な経営学者になられていった。そのご活躍を僕は本当に誇らしい思いで眺めていた。ありがたいことに、その後もご縁をつながせていただき、いろんな話をさせていただく機会を得た。自分の職業人生を振り返ると、たくさん失敗もしたし、本当に恥じ入るようなこともたくさんあるが、他方で、複数の会社を渡り歩き、いろんな土地に住まい、たくさんの経験をすることができた。自分の来し方は総じてadventurousで愉快なものだったと思う。その最初の背中を押してくださったのは誰あろう延岡さんだった。本当に感謝の思いだ。