スウェーデン
スウェーデンがNATO加盟申請を決めた。200年も続いてきた軍事非同盟の歴史をわずか3か月で変えるという異例の決定で、フィンランドのNATO加盟と合わせ、欧州の安全保障体制の歴史的大転換だと報じられている。スウェーデンにはソニーエリクソン時代の4年間を通じて浅からず関わってきた。友だちもいるし、向こうに住んだこともある。スウェーデン国民の印象は、とにかく賢くてマジメだということ。日本に赴任したスウェーデン人から「北欧には地震がない」という話をよく聞いた。いくつものプレートのはざまで地震が頻発する日本と違い欧州は地盤がビクとも揺らがない。本当に地震がない。おまけに氷河が削った北欧の大地はまっ平ら。昔から人はそこに教会を立て高い塔を建設した。その印象と重なるのだけれど、煉瓦の石をひとつひとつ積んでいくように、何事も構造的にしっかりしたものをつくるということが彼らスウェーデン人の思考と行動に根付いているということをいつも感じてきた。構造的にしっかりしたものにするために彼らはアーキテクチャーとプロセスを重んじる。合議を重んじる。民主的だが厳しい世界。何より参加者はロジカルであることを求められる。思いつき、感情、独断専行は全て排除される。モバイル通信の仕様と企画はスウェーデンのエリクソンとフィンランドのノキアがサウナはいりながら雪隠詰めで決めたというまことしやかな話があるが「さもありなん」だ。そんなスウェーデン国民が、200年の歴史をわずか3か月で塗り替えた。ぱっと見には、ロシアに対する恐怖に背中を押されたとも考えられるし、そういう要素は少しはあるのだろうけれど、あのスウェーデン人なら、詰め将棋のように厳格な論理の積み重ねを高速回転でやったのではないかと思う。日本が同じ状況だったらどうだろう。絶対に無理だ。3か月どころか3年たっても成案に至らない。日本人は概してロジカルではない。感情が先行する。ロシアを真ん中に挟んで日本も本来は同じ脅威に晒されている。北海道防衛をどうするのか本当は国民的議論をしなきゃいけないのに。