呪詛
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が圧倒的に面白い。権力闘争、お家安泰、陰謀術数、不信、好悪、裏切り、罠、ありとあらゆる人間の業が渦巻きぶつかり、毎回誰かが非業の死を遂げる。回を追うごとに増していく緊張感。そしてラスト数分間であっといわせる展開で「次回につづく」。そりゃハマる。NHKはこれNetflixに出したら海外でも受けるのではないか、と思うくらい、脚本も演出もキャストも演技もどれも優れた作品だと思う。ここ数回は「呪詛」がテーマ。呪いは一般的に世界共通の大テーマだが、日本の呪詛は呪いを掛ける相手に危害が及ぶように行うとある。明確に殺人的な意図を持った、いわば「呪い殺し」。日曜夜8時のゴールデンタイムで「呪詛」とはNHKもやるなぁ。いまの日本では、呪詛自体は「不能犯」、即ち結果を生じせしめることが不可能、と整理され処罰できないが、古代ではこれは処罰対象とされた明確な禁止/違法行為だったらしい。逆に、元寇など国家転覆緊急事態的な反乱や侵略に対して朝廷自身が鎮定のための「調伏(ちょうぶ)」を有力社寺に命じたこともあったらしい。テレビで呪詛をみててもナンセンスな感じが全然しないのは、何か人間なのか日本人なのか、僕らの中に呼応する「何か」があるせいかもしれない。現在社会で既に大問題になっているストーカーとかSNS上での犯罪的な罵詈雑言・誹謗中傷の類は、この呪詛と何か共有する、暗い情動なのかもしれない。