半導体戦争

TSMCの建設現場の前をしょっちゅうクルマで通る。いつの間にか建物が姿を現してきた。何十機ものクレーンが並び立つ光景はいつ観ても壮観だ。ちょうど1年前は茫々たる畑だったが、たった1年でこんなに姿を変えるのか。さすが国家プロジェクト。今週の日経新聞には、地元の不動産屋に「30億円」で物件探しする外国人投資家の話があった。ブローカーなのだろう。これから熊本では土地、マンション、ゴルフ場、ホテル、旅館… あらゆるものが投資というより投機の対象になるのかもしれない。なにせ、世界に冠たる半導体ファンドリーの新設工場。最初は需要が確実な既存技術の既存製品を扱うと言われているが、なにせ時代はなんでも半導体。自動車から武器まであらゆるものが半導体を欲している。新工場はきっとフル生産、フル稼働だろうし、拡張もしていくだろう。何より周辺に装置屋から半製品組立まで、半導体周辺の事業が次々立地しやがて集積する。iPhoneのアップルが進出することだって夢ではない。世は32年ぶりの円安で大騒ぎだが、この円安のおかげでTSMC周辺は先進的なモノづくりの集積拠点化が加速することは間違いない。工場立地はもちろん周辺の道路・インフラ等々空前の建設ラッシュが訪れるだろう。このことは経済安全保障の観点からは日本にとってもアメリカにとっても西側全体にとって望ましい。台湾有事になればTSMCというより台湾の半導体ごと台湾から国外逃避することも十分ありうる。半導体の覇権をめぐる政治経済の「戦争」の渦中にこの工場は巻き込まれるのかもしれない。不謹慎なワクワク感を禁じ得ない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です