GDP世界4位目前

先日の日曜日の日本経済新聞朝刊には「名目GDP、ドイツが肉薄 日本、世界3位危うく デフレや円安響く」の見出しが躍った。1967年にGDP世界2位に躍り出た日本は長くその地位をキープしバブル絶頂の時期はトップのアメリカを追う勢いだったが、バブル崩壊後、失われた20年だか30年だか長期低迷の時期に突入し、2010年には中国に2位の座を奪われた。そしていよいよ3位の座もドイツに明け渡す。記事に載っていたグラフはドル建て名目GDPの推移で、そのときどきの為替の影響を受けるが、総じて日本は横ばいなのは一目瞭然だ。この理由についてはいろいろ後講釈がついているが、自分の肌感覚で思い返すと、90年代はプロダクト全盛の時代だった。自動車メーカーも電機メーカーも新車、新製品を次々投入するのが習わしであり仕事だった。海外も国内も消費意欲が旺盛で新しいものを常に追い求める、メディアもそれを煽る。生産者と消費者の蜜月の時代だった。それがいつしか「グローバル競争」「所有と執行の分離」「ガバナンス重視」「株主の利益最優先」の時代になって、2000年以降は気が付けばアウトソースとリストラばっかやる時代になった。国内生産拠点をどんどん閉めて中国に移管した。コールセンターのようなサービスも中国に移管した。そのほうが圧倒的に安かったから。今思えば中国に苗も土も水も肥料も全部差し出したようなものだった。中国経済膨張のイナーシャーになったのは間違いなく日本のリストラ優先の会社運営にあった。連結決算の大企業はそれで純資産が膨らむからよかったが、日本のドメスティックの経済に与えた傷はこうしてみると甚大だった。一方のドイツはよく調べてないのでいい加減なことを言っているかもしれないが、EUの盟主として移民を受け入れ豊富な労働力を背景に高付加価値のモノづくりを進めたのだと思う。幸か不幸か隣に中国がいなかったからなんでもかんでも中国にアウトソースするということはなかったはずだ。地政学的な運不運というのか、歴史にifはご法度だが、もし日本の隣に中国がなかったら、こんなことにはなっていないはずだ。ソニーもリストラに次ぐリストラで2010年ごろは瀕死だった。新しいことをやろうぜと登場してリストラ時代をターンアラウンドさせたのがいまの吉田十時コンビだった。アメリカ発祥の株主本位経営に結局翻弄され後ろめたい歴史という因果を含んだ中国に養分を吸い取られ、気が付けば高齢者大国になって「どうなる、日本」という様。このグラフが物語っていることはそういうことではないか。GDPだけが物差しではないから、そろそろ日本はもっと別の「ありたい姿」というか哲学を模索していかないと、この先滑り落ち続けるこの順位をいくら眺めても失った時間は帰ってこない。

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