世界との格差
また大谷翔平の話。すごすぎる。練習では、あのどでかい、ホームランが最も出にくいとされるナゴヤドームの最深部、外野5階席にまで届く打球を打って日本中を驚愕させ、昨日の本番では、片手で片膝ついて完全に体勢崩されながらフォークボールをバックスクリーンにホームラン。次の打席ではバットが折れる詰まった当たりがまたホームラン。WBC本番ではなく単なる練習と練習試合ではあるが、この数日の衝撃は今後日本の野球史で長く語り伝えられるのではないだろうか。野球ファン歴50年の者としては、明後日のWBC開幕が本当に楽しみ~....ってところだが、日本のトップトップの選手が大谷をみて僕らと同じく「すげー」「言葉にならない」と一様に白旗状態になってるところに(もちろん、誰がどうみてもそのとおりなんだろうけど)何か僕は一抹の切なさを感じてしまった。80年代後半~90年代前半は「アメリカ進出」が日本のキーワードだった気がする。ビジネスもエンタメもアメリカで旗を揚げるのがカッコよかったし目標の時代があった。野球では98年に野茂が単身渡米して大成功した。日本での成功の延長線上にアメリカ挑戦があった。アメリカ進出はある種目標/ゴールだった。しかし大谷は違う。高校生の頃からメジャーで二刀流というアジェンダを掲げて生きていた。結果的に日本の数年のNPBでのキャリアがプラスにはなったかもしれないが、もうハナから目線が違う。方向が違う。そして実際にメジャーに行ったら、そこでとんでもなく成長して違う生き物になって帰ってきた感じ。テレビ越しに見る大谷は体格、腕っぷっし、バットスイング… すべてが6年前の日本シリーズでみた大谷とは桁違いに成長していることが僕にでもわかる。昔から日本人が感じていたはずの「世界との格差」を誰あろう本場で成長した日本人に見せつけられているというのは結構キツい世界だ。村上なんかはたぶんNPBが完全に箱庭に見えているだろう。そしてきっとできるだけ早くメジャーに行こうと決めたに違いない。いち早く海外機会をオープンにしたサッカーが30年かかって世界と戦える入口まで来たのは決して偶然ではないと思う。これから経済も暮らし生き方もドメスティックを貫徹するのか値段とレベルが違うoutside Japanの世界で自分を鍛えるのか大きな分かれ目だ。若くて有能でやる気のある人たちは間違いなく後者を選ぶだろうしそうあるべきだ。かくして、この何十年か地方が東京に感じていた格差を今度は日本全体が海外に対して感じるようになる。海外に対して何をみても「すげー」「言葉にならない」と嘆息する日本/日本人になってしまうかもしれないなと思って切なくなった。