理想と現実

独立開業から19か月目が終わろうとしている。最初の半年くらいは公的支援機関の専門家登録をとりつけるプロセスに汲々としていたが、最近ではいろんなことがだいぶ落ち着きペースもわかってきた感じがする。中小企業診断士というのは、弁護士や税理士のように法律で決まった特定の独占業務があるわけでもなく、税理士さんのように事業上絶対に欠かせない決算や経理処理の業務を請負って顧客から月額の顧問報酬をもらえる仕事でもない。ある特定のクライアントさんにサービス提供して月額報酬をもらえるのは理想であり目標であるが、なかなか現実は簡単ではない。そもそも自社の経営に関する「診断」というものを有償で自分からしてほしい経営者さんなんていない。しかし、人間の健康と同じくちゃんとした診断は経営上の問題/課題の発見の端緒となる。課題が見つかれば経営者はそれらに向き合い解決策を模索する。かくして経営変革のプロセスが始まる。だから「診断」には本来とっても価値がある。しかしここにこの診断士という職業の大いなる矛盾と葛藤がある。本来とても価値のある筈の経営診断。それを支えるビジネスモデルがない。確かに専門家派遣はその解決のひとつかもしれないが、この19ヶ月の短い経験では商工会等にくる相談は補助金申請絡みが圧倒的。自社の経営や課題に向き合いたいという奇特な人はまずいない。中小企業支援の政策がどちらかというと補助金という即効薬に傾き過ぎていて、支援する側の診断士もそっちのほうがカネになるので補助金偏重に行きがちだ。しかし課題の整理もないままに補助金に走るのは決して望ましい姿ではない。理想と現実。なかなか悩ましい。

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