ワクワク国策

熊本はいま半導体で沸いている。それこそ「沸騰」時代だ。経産省が先月公表した「半導体・デジタル産業戦略」という資料がある。情報量が豊富で、国の戦略がとてもよくわかる、非常によくできた資料だが、ここでは明確に「九州・熊本を産業用先端半導体の世界拠点に」という方針が掲げられている。TSMCの進出をテコにして、自動車産業を始め国内産業界の幅広いニーズに答える多種多様な半導体の製造拠点を熊本を中心に立ち上げるだけではなく、シリコンアイランド九州として世界の産業サプライチェーンの中核を担うことを目指す、とある。明治時代の殖産興業、戦後復興から高度成長を牽引した鉄鋼業/石油化学工業等重化学工業の支援等、国の産業政策は国力の増大に直結してきたが、今回はそれに匹敵するくらいの骨太で経産省/国の本気を感じさせるものだなぁと感じた。古今東西、国策で選ばれた町は否応なく大変貌する。古くは軍都、軍港の類。江戸時代は静かな漁村だった広島・呉は明治時代に大きな海軍の町になった。人口は40万人になったという。製鉄所、コンビナート、原発…挙げればキリがない。そこに半導体が加わる。半導体シティ、熊本。九州フィナンシャルグループの試算では、TSMCが稼働する2024 年から 2 年間の経済波及効果は 1 兆 8千億円、2022年から 31 年までの 10 年間の経済波及効果は4 兆 2,900 億円 と試算されている。TSMCの進出で、国内外約80 社が新たに熊本県内に拠点施設・工場増設、その設備投資の波及効果だけで約9,300 億円、操業後5年間の関連産業の生産や就業者の日常消費効果約 2兆円、関連産業の工業団地開発 359 億円、住宅関連投資 713 億円など。現在約50兆円とされる半導体需要は2030年には100兆円になる。人口減少に負けないためには、こういうメガトン級の世界需要のサプライチェーンの根幹を握らねばという見立ては全く正しい。人口が減り続ける日本が経済的に持続するには本当にこれしかない。半導体で付加価値をとり、またその下流(デバイス)でも付加価値をとる。なんかワクワクする国策だ。

https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230606003/20230606003-1.pdf

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