真のレジェンド
先週の土曜日にNHKで、ちょうど40年前の伝説のコンサート、オフコースの日本武道館コンサートが90分のデジタルリマスター版として放送された。その日は福岡に出張中だったが、宿泊先の部屋のテレビでしっかり観た。徒に郷愁やノスタルジーに敢えて浸ることもないのだけれど、40年前の映像と音楽に90分もどっぷり浸っていると必然的に大学生だった当時の暮らしがリアルに思い起こされた。当時音楽メディアはカセットテープ。それを大きなラジカセで聞いていた。ソニーの「リバティ」というラジカセだった。結構重たかった。当時ウォークマンは既に世の中にあったけれど、大学生に5万円超のガジェットは高嶺の花。加えて、音楽を外に持ち出すというのは当時まだ一般的なことではなかった。学祭で模擬店ブースにBGM流すからラジカセ持ってこいというシチュエーションくらいだった。僕にとって音楽はひたすら狭い6畳間で孤独な夜に聴くものだった。オフコースは随分聴いた。テープが擦り切れるくらい聴いたと思う。あれから40年。後期高齢者になった小田和正。まさか75歳で、しかも往時の声そのままで歌っているなんて誰が想像したか。もうそのことだけでも世界遺産ものだ。引退発表した吉田拓郎もそうだが、これらの人は明らかに当時の旧習・旧世代と一線を画し、新しい体験、新しいスタイル、新しい価値観を歌を通じて世に問うていた。そこが共感ポイントだった。当時テレビになぜ出なかったのかについて吉田拓郎は最近こんなことを言ってる。「テレビに対してはアンチテーゼもありましたね。なんでお前らと歌わなきゃいけないんだよと。生意気な若造の気分もありましたから。別にテレビで歌わなくたって、俺の音楽は若い奴らはわかってくれるというか。テレビで歌う歌手になるのは嫌だっていうのがあったんですよ。テレビ局に対しては好意的じゃなかったし。出ることがあってもさっさと帰ってくるって感じでしたね。テレビの歌番組に出て、1曲丸々歌えなくて、それで全国に見てもらって、ヒットさせるっていうやり方はもう古いよって思ってた。もう時代が違うんだって」おそらくオフコースも同じ考えだったと思う。いつの世も若い力が世の中を動かし変えてきたと思うが、40年経っても色褪せない、むしろ輝きを増すような音楽を時代と戦いながら創作してきたこの人たち。まさに真のレジェンドだ。