カイシャを辞めやすくなる
岸田政権は発足当初「聞く力」を強調してすごく低姿勢な感じでスタートしたが、発足から2年弱、これまでやってきたことは国際情勢の大変化もあったが防衛費増額やコロナの5類移行、子育て支援拡充等々確かに思い切ったことに手をつけている。株価もいろいろ要因はあるけれどバブル期ピークに近づく水準まで爆上がり。この前思い切って解散してりゃ勝てたのにと思うような仕事ぶり。もうひとつ、岸田内閣で無逃せないのは「人への投資」の領域。既に内閣は3つの重点方針を示している。①企業間・産業間の労働移動円滑化に重点を置いて非正規雇用を正規雇用に転換する企業や、転職・副業を受け入れる企業への支援を新設・拡充する ②在職者のキャリアアップのための転職支援に向け、民間専門家に相談してリスキリング・転職までを一気通貫で支援する制度を新設する ③労働者の訓練などを支援する企業への支援金の補助率引き上げなど、企業による在職者のリスキリング支援を強化する。… 特に①は人手不足とも相まって賃上げが文字通り「構造的に」進むだろう。これは本当に昭和を引きずってきた日本の労働市場を根本的に変えるなぁと思う。20世紀は人が掃いて捨てるほどいた。「お前の代わりはいくらでもいるんだ」は昔は上が下に言う「殺し文句」だった。生産年齢人口が減り始めた今日においては「こんな仕事の代わりはいくらでもあるんだ」と逆に下が上に言う時代になった。自己都合の退職の際、失業給付は一定の待期期間が必要だが、これが「即給付」になるらしい。そうなれば無職無給の恐怖はなくなる。これからは人は気軽にどんどん会社を辞められるようになるだろう。これは中小企業にとってはえらいことだ。加えて、政府は中小企業に対しては持続化よりも今後は「廃業」を支援する方向に舵を切るという話も聞く。経営者も労働者も中小企業においては「抜けやすく」なる。その先にはどんな世界があるのだろうか。満足に人並みの給料を払えない=内部付加価値の低い零細企業は当然淘汰され、M&Aが活発になり、中堅大手に集約されていくのだろう。生産性は高くなるが労働側も二分化され、勉強もしない、リスキリングにも関心のない「ついていけない」組は構造的に失業するのだろう。本当に時代の潮目だ。